登録生活支援員研修(第8回:西東京市の生活保護)

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講師:福所さん  福祉部生活福祉課援助第2係 係長

かって北九州の方で、「就職した」との虚偽報告を強いられ、生活保護を打ち切られた結果、「おにぎりが食べたい」と書き残し孤独死した悲惨な事件があっ た。
この数年の不況が原因で、通常は考えられない人達までが、生活保護を申請している。西東京市も同様だそうだ。通常の生活保護の割合は、高齢者(65歳以上)が40%、障害者(手帳)が10~15%、傷病者が10~15%、母子家庭が10%、その他が20~25%。この「その他」が増加している。
自分自身は無縁でありたいが、近所に必用な人が出てくるかもしれない。生活保護制度のことを知らなかったり、申請を恥と考える人もおり(扶養義務のある親兄弟に援助の可否を照会されるので)、その結果衰弱死などが近隣であったらショックだ。実務的にもその内容や手続き方法を理解しておいた方が良さそうだ。
また、生活保護制度は、憲法が規定する生存権を保障するもので、社会福祉の基本となる制度である。
最近、話題を集めているベーシックインカムの議論は、社会の仕組みや人間の生き方までを根本的に左右する思想とも言えそうだ。

生活保護制度は、憲法で宣言する最低限の生活(ナショナルミニマム)を保障するとともに、一日も早く自分の力で生活していけるように援助する制度(ゴールではない)。 西東京市の福祉事務所は生活福祉課であり、田無と保谷庁舎の各々の窓口が対応している。

この憲法が保障する保護請求権は強力であり、窓口は申請されたら無条件で受理し、原則14日以内に保護を開始するか却下するかの決定を行う義務を負っている。という訳で、「保護申請を受理しない」(水際作戦とも呼ぶ)ということは法令上ありえな い。 のだが、水際作戦的な指導(?)が窓口で行われるのには理由がある。 一つは、不正受給であり、もう一つは、地方自治体の財政負担増である。不正受給に関しては、暴力団体の影がちらついているが、その他にも一般市民からの通報もある。(誰が生活保護を受けているかは、基本的には分からないはずだが) 不正受給の結果だけではないが、高齢者や失業者の増加に伴い、地方公共団体の負担(保護給付と関係する職員の経費)も急激に増えている。

福祉事務所の窓口では、通常生活相談に来た人に対し、失業中の場合は雇用保険の失業等給付を受給できないか、60歳以上の場合は年金を 受給できないか、病気、ケガなどで障害を負った場合は障害年金を受給できないかなどの、他法優先の制度の趣旨説明の他に就労の可不可、扶養義務者の扶養義務などについて説明を行う。また、「まだ働ける(年齢が若い)」、 「扶養義務者がいる」、 「ホームレスだ」(申請時に住所が無くても(住民票の有無は無関係)保護しない理由にならない)」、 「現住居の家賃が高すぎる」などを理由に窓口で申請自体を断念させている事例もあるようだ。

手続き自体は、生活福祉課で相談員(西東京市の場合はケースワーカーが兼務)が、保護の申請を受理し、地区担当員(ケースワーカー)が、自宅訪問を行い詳細を調査(その際、土地・家屋・車などを現物確認)。2週間以内の保護の要否判定を行うことになる。ナショナルミニマムを決める項目は、生活扶助や住宅扶助など8項目。国が定めた保護基準により支給される。

生活保護は決してゴールではないため、自立に向けた様々な指導が福祉事務所からなされる。これが行過ぎると水際作戦となりかねないわけである。保護費の使途は自由なので、生活保護を安住の地として、遊興に費やす不心得者もいるので、やむ終えないとの意見もある。 但し、自立しようと努力すると所得が増えた分、保護費が減らされるので、生活保護から抜け出しにくい面もある。
更に、昨今は、ナショナルミニマム以下の所帯が増えているため、生活保護を受領していた方が生活水準が高いと言う、逆転現象もでており、生活保護から抜けにくいという状況もあるようだ。

(5月10日公開)

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